野球肘
野球肘とは、野球を中心とした投球動作のよって生じる肘関節の障害の総称です。
野球肘には肘の外側、内側、後側の3つに分けられます。
子供の骨は未成熟であるため、弱くて傷つきやすく、大人には起こらない障害が起こります。
身長が急に伸びる10〜12歳に発生しやすく、この時期は特に注意が必要です。
原因・病態
投球動作では、肩関節が最大外旋した時と、ボールのリリース直後でもっとも肘関節に負担がかかります。
投球数が多すぎることや、不良な投球動作によって、肘にかかる負担が大きくなり、痛みが発生します。
また投球動作は下肢、体幹、上肢が協調動作する複雑な全身運動ですので、股関節や体幹の柔軟性低下や筋力低下などが野球肘を引き起こす原因となっている場合もあります。
分類
①外側型野球肘
肘外側の上腕骨小頭という部分の障害で、離断性骨軟骨炎とも呼ばれます。発生頻度は1〜3%程度です。
投球時に肘関節の外側に繰り返しのストレスがかかることで、上腕骨小頭の軟骨が剥がれます。
初期にはあまり痛みがないため、痛くなって病院を受診した場合、かなり進行しており、時には手術加療が必要になることもあります。
早期発見のためには、症状のない段階で検査をする必要があります。また、投球フォームの確認や、可動域のセルフチェックなども有効です。
症状がなくても投手などの投球数の多い選手は早期発見のため受診することをお勧めします。
②内側型野球肘
肘内側の上腕骨内側上顆という部分の障害で、内側側副靭帯が骨に付着しているところが投球時に牽引されることで、骨や軟骨が損傷します。
野球肘の中では最も発生頻度が高く、10〜30%程度に生じます。
ほとんどは一定期間の投球中止といった保存的加療で治癒します。
③後方型野球肘
尺骨の肘頭という部分の障害です。
投球動作のボールリリース(ボールを離した直後)からフォロースルー(腕を振り下ろす)時に肘が伸展することで、肘頭と肘頭窩とが衝突し、関節に炎症を起こします(肘頭窩インピンジメント)。
また、衝突を繰り返すうちに疲労骨折を起こしたり(肘頭疲労骨折)、骨端線自体が痛んでしまったりすることがあります(肘頭部骨端線離開)。
診断・治療
診断は入念な診察とレントゲン検査、超音波検査(エコー)で行います。時にはCTやMRIによる精査も行います。
いずれのタイプにおいても、一定期間の投球制限や投球中止は必要です。
同時に、投球動作のチェックを行い、不良な投球動作がある場合は投球指導やリハビリテーションを行います。
痛みが強い場合は、痛み止めの内服や外用薬(湿布や塗り薬)、関節注射を行うこともあります。
外側型野球肘で進行した例では手術加療の適応となります。
手術は連携先の病院で院長自ら執刀いたします。