肩関節周囲炎(四十肩、五十肩)
原因
四十肩(五十肩)という病名は、昔は肩の痛みの原因が分からなかったため、経過とともに自然に治癒する症状の総称でした。
現在は肩関節やその周囲の滑液包(関節周りの袋)に生じる炎症や癒着が原因であることが分かっており、肩関節周囲炎と呼ばれています。
症状
発症初期は肩関節の違和感(奥が重い程度)から始まり、進行すると痛みで肩を挙げづらくなり、寝返りをすると肢位がズキズキ痛み、眠りを妨げます(炎症期:2-6か月)。
その後、痛みは徐々に落ち着きますが、関節が固くなり動きに制限がでるのが主な症状となり(拘縮期)、さらに経過すると徐々に動きがでてくるようになります(寛解期)。
しかし、中には動きの制限が改善しないまま自然経過で軽快せず、長期間にわたり肩関節の拘縮で肩が上がらない状態になってしまう方がおられます(凍結肩)。
診断·治療
症状の経過や診察、超音波(エコー)検査で診断することができます。
治療は、炎症期には痛みの改善が中心です。
炎症のある部分にヒアルロン酸やステロイド薬の注射をし、痛み止めの内服と外用薬(湿布)、リハビリテーションで痛みを改善します。
エコーを使うことで、診断ができかつ、正確な注射を行うことができます。
拘縮期には動きの改善が中心の治療となるため、リハビリテーションでじっくり肩関節の動きを改善していくのが効果的です。拘縮が高度であったり、リハビリテーションの効果が乏しい方や、凍結肩の方には、肩関節の支配神経に麻酔薬を注射して無痛で拘縮した関節包を伸ばす関節受動術(サイレントマニプレーション)が即効性があり有効です。
サイレントマニプレーションは、エコーガイド下神経根ブロックで肩周辺を確実に麻酔することで、痛みを感じることなく非観血的関節受動術を行う方法です。
超音波診断装置(エコー)の進歩は、疾患の診断だけでなく、治療法にも大きな変化をもたらしました。以前は入院や手術が必要だった難治性の凍結肩を外来で簡単に治療できるようになりました。エコーガイド下で肩関節を支配するC5、C6神経根の精度の高いブロック注射、肩関節内注射を外来で正確に簡単にできるようになったため、安全で確実な無痛の「サイレントマニピュレーション(非観血的関節受動術)」が可能となりました。
サイレントマニプレーションを行うことで、拘縮のある肩関節の痛みを即時的に改善することができ、リハビリテーションに費やす期間を大幅に短縮することができます。